2024年度の宇宙地球環境研究所(ISEE)の融合研究戦略課題採択テーマのひとつである「太陽系年代学の進展と放射線環境変動研究との融合」(代表 環境学研究科 教授 渡邊誠一郎先生)では、分野融合を目指した研究会を開催しています。
第3回研究会では、名古屋大学宇宙地球環境研究所 年代測定研究部の仁木創太研究員(学振PD)から、レーザーアブレーションICP質量分析法(LP-ICP-MS)について、その基礎から最新の研究開発動向までを概説いただいた上で、実際の隕石などのウラン–鉛年代測定データを御紹介いただきます。御講演を踏まえて、太陽系年代学の研究の展望と放射線環境変動研究との接点の探索も含めて、議論を深めたいと思います。
日時:
2024年11月29日(金)13:30―16:00
会場:
研究所共同館Ⅱ2階221室(年代測定研究部セミナー室)
プログラム:
13:30―13:45 はじめに・研究会の趣旨(渡邊誠一郎 先生)
13:45―15:15 LA-ICP-MSを用いた同位体比分析の勘所と宇宙化学的応用研究 (仁木創太 研究員)
15:15―16:00 総合討論
講演要旨:
レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)は高空間分解能と高感度を両立した元素分析法であり、材料科学、生命化学、宇宙地球化学などさまざまな研究分野で広く用いられている。特に宇宙地球化学においては、鉱物試料の放射性同位体年代や安定同位体比の測定に活用されている。競合する二次イオン質量分析法(SIMS)と比較して以前はLA-ICP-MSの低コストな側面が強調されたが("Poor man's SIMS") 、LA-ICP-MSの決定的な優位性は局所サンプリングとイオン化を独立して実施するポストイオン化にある。LAを用いた高効率な局所サンプリングと運動温度および励起温度が極めて高いICPによる高効率なイオン化により、スペクトル干渉および非スペクトル干渉(i.e.,マトリクス効果)を抑えた同位体比分析を実施できる。この特長は分析の正確性向上の観点で極めて重要である。
本話題提供では、LA-ICP-MSの基礎や近年の研究開発動向(e.g.,フェムト秒LA法など)を概説し、さまざまな鉱物種から取得した実際のウラン–鉛年代データを紹介する。最後に最近の研究成果として隕石に含まれるリン酸塩試料やペロフスカイト試料の年代測定について紹介する。以上の話題提供を通じてLA-ICP-MSを用いてどのような質のデータが得られるかの勘所を掴んでいただき、将来的な共同研究の可能性を探る機会としたい。
企画:
渡邊誠一郎・日高 洋・城野信一・橋口未奈子(環境学研究科)
加藤丈典・三好由純・岩井一正(宇宙地球環境研究所)
参加に関する詳細は、宇宙地球環境研究所 加藤(kato[at]nendai.nagoya-u.ac.jp)までお願いします。